デザインとサービスは密接に結びついている。デザインがサービスの売上をかなり左右する。どういう人物がサービスの顧客なのかを考えることによってデザインは生まれる。故にデザインはサービスの本質を表している。デザインはサービスの根幹に食い込んでいる。
しかし技術はどうだろう。一部の技術オタクに対しては技術はサービスのコア要素にはなるかも知れない。しかし大多数の顧客がそのサービスに使われている技術に興味があるとは思えない。
技術がサービスの根幹に結びつくのはどういうときだろう。技術は第一にコストである。技術はそのサービスを可能にしてくれるものだが、サービスを企画する人にとっては実現のための技術はコストである。技術にお金と時間をかけないとやりたいことができない。技術無しでやりたいことができる世界は幻想や妄想の世界だ。人類が妄想を具現化できる世界に住んでいたら技術はこの世に存在していないだろう。残念ながら我々の世界では妄想はそのままでは具現化しない。妄想を具現化するためには技術への投資が必要となる。技術は第一義的に足かせである。
だから、技術者の優秀さはそのコストをいかにゼロに近づけられるかにかかっている。優秀なハッカーがウィザードと呼ばれることがあるのはそういう側面があるからではないだろうか。
また、そこから間接的に技術はスケーラビリティを実現するものとなる。通常の技術者が生み出す技術的コストの係数を1とすると、たとえば優秀な技術者はそれを0.1にまで下げることができる。サービスの企画者が100のコストを投入したとき、通常の技術者が実現できるのは100のことに過ぎないが、優秀な技術者は1000のことを実現してしまうだろう。その1000のことは、サービスがさばけるクライアント数を増やす方向に生かされるかもしれないし、サービスの機能の豊富さとして具現化するかも知れない。
優秀な技術者はサービスのコストを減らし、サービスにスケーラビリティをもたらし、サービスに沢山の機能を実装する。
なんだか当たり前のことだが、技術者を「手を動かす労働者」としてしか見ていない企業には上記の視点が欠けている。そしてこの世の99.95%の(IT)企業が、技術者のことを「手を動かす労働者」としてしか見ていない。
しかしサービスを遅くするのも速くするのも技術者次第だ。アイデアとデザインと技術は全て掛け算だ。アイデアだけを実現させようとする人間が多すぎる。アイデアとデザインだけでは絵に描いた餅だ。人類を足かせから解き放つには優秀な技術者が必要だ。そしてアイデアは多くの場合技術に規定されている。
デザインがサービスに直接的なインパクトを与えるのに比べたらかなり遠回りだが、技術は企画者の思考の枠組みを作ったり変えたりすることができる。技術者の一人として生きるなら、枠組みを作ったり変えたりする側にいるようにしたい。