日本社会の雇用の歴史の本。年功序列や新卒一括採用といった日本の雇用慣行がどのように形成されてきたのかを詳述している。
それはそれで面白いのだが長過ぎると思う。歴史の記述自体がこの本の目的であるならばこの長さで問題ないのだろうが、多くの読者はそれを求めてこの本を読むのではないだろう。文字通り、日本社会のしくみが知りたくて繙くわけだ。しくみの説明自体は1,2,8,終章の4つで足りると思う。本のサイズは半分以下で済むはずだ。歴史の詳述は別の本にまとめたほうが親切だった。
小説なら別だが、何かを論じた本が長すぎるのは、読者にとって良いことはなにもない。時間と労力(とカネ)を費やさねばならなくなる。長過ぎる本は読者にコストを強いる。であるならば著者はそのコストに見合うだけの内容を提供せねばならない。私にとっては、この本は労力の二分の一程度の内容しか提供しなかった。
長過ぎる本は、結局何を言いたい本なのかを見えにくくする。何を言いたいのかわからない本は、存在価値が薄い。
歴史を知りたい人がこの本を読めば、労力に見合う内容を得られるだろう。しかし新書を手に取る読者は手軽に知識を手に入れたい人々であって、労力を費やしたくないから新書を読むのである。この本の企画にはなにか根本的な誤解があるような気がする。
まあ、それでも結局本が売れれば出版社も著者もそれで良いのだろう。労力を嫌う新書読者層のどれほどの割合の人が、この本を飛ばさず誤読なく読み通すのかはかなり疑問ではある。
新書はやっぱり短くわかりやすくまとまっており参考文献が次の書物へのガイドラインとして機能しているものが一番という学びを得られたので良しとする。